プラント災害リスク評価

プラントにおける主なリスクは以下の3つであり、いずれもその引き金となる初期事象は漏洩である事が多い。

  1. 火災
    • 輻射熱被害
    • ボイルオーバー
  2. 危険漏洩とガス拡散
    • 漏洩
    • 漏洩した液の広がり
    • 蒸発
    • ガス拡散による人命被害
  3. 爆発
    • 蒸気雲爆発VCE(Vapor Cloud Explosion);被害を与えるほどの爆圧を生じる、屋外で起きるガス雲の爆発。
    • フラッシュファイア(Flash Fire)爆圧を生じない爆発的燃焼だが高温のため特に人的被害が大きい。
    • BLEVE(Boiling Liquid Expanding Vapor Explosion);ブレビーと呼び、沸騰液膨張蒸気爆発や沸騰液体蒸気拡散爆発などと訳される。
      液体が急激に沸騰することによる爆発現象であり、容器の破損によって引き起こされるものである。
    • ファイアボール Fireball
      BLEVEなどで大気中に放出された可燃性蒸気が空中に浮いたまま急激に燃焼し、火球となって非常に大きな輻射熱をもたらす現象である。

 上記の3つの災害は危険物の漏洩が初期事象であるが、漏洩に至る原因が誤操作や機器の故障である場合は、さらに遡って誤操作や故障を初期事象とします。一方、危険物が関係しない電気室のケーブル火災、落雷による建物の火災などの場合、火災そのものを初期事象とします。このように初期事象として何を選択するかは重要であり、プラントについて深い造詣と経験が必要です。弊社は永年の経験と実績により最適な方法を提案します。

 

 評価方法 

  1. 初期事象
    上述のように初期事象をリストアップします。

  2. 定量的リスク分析(QRA)
    各初期事象についてイベントツリーを展開し、各事象ごとに誤操作、故障などの確率を適用して災害が起こる発生頻度(回/年)を求め、所謂、定量的リスク分析(QRA)を実施します。
    この作業のためにはプラントに配置図、P&IDフローダイアグラム、機器データなどの資料が必要です。誤操作、故障などの確率は石油コンビナートの防災アセスメント指針、原子力関係のデータ、或いは米国やEUで公開されているデータを採用します。しかしこれらのデータが絶対的なものではないが相対的にはほぼ正しいとの判断の下に、弊社では定量的リスク分析の結果得られた各災害の発生頻度のうち最大のものを基準とした相対的災害レベルインデックスを計算しています。

  3. 各災害の影響度評価
    影響度を評価する物差しとしては、災害により被った人的被害、設備を再建するための建設費用、営業停止期間の損失、風評被害による損失など様々な損失が考えられ、また場合によってはそれらの組み合わせも検討しなければならない。これらの損失を見積もるためには災害によって起こる影響の物理的範囲を各種シミュレーションによって求める必要があります。各々のシミュレーションの方法等についてはプラント防災シミュレーションを参考にしてください。
    この際、注意すべきは、例えば爆発はいきなり突然爆発するのではなく、その前に漏洩があり、ガス拡散があり、場合によっては火災があって、その後BLEVEが発生するなど一連の災害の流れがあるという事です。
    弊社では下記例のように漏洩・蒸発などの初期事象から、ガス拡散・火災・爆発までの一連の流れについて一貫した災害シミュレーションを実施し、全体としての影響度評価を行っています。東南海地震などの大規模地震対策の流れの中で、このような一連の災害シナリオに基づく影響度評価は、今後重要になってきます。

    災害
    シナリオ

    球形タンクからの漏洩

    原油タンクの全面火災

    毒性ガスを含む横型タンクからの漏洩
    内容 球形タンクから漏洩・蒸発
    (漏洩/蒸発量を計算) 

    ガス拡散
    (LELの50%範囲の経時変化を図示)
     
    着火しフラッシュファイアーが発生
    (影響範囲を図示) 

    バックファイアーにより
    防油堤火災が発生
    (輻射熱範囲を図示) 

    BLEVEが発生
    (圧力波および破片の飛散範囲
    を図示) 

    ファイアーボールが発生
    (輻射熱の影響範囲図示)
    原油タンク全面火災
    (輻射熱の影響範囲を図示)

    消火できずボイルオーバー
    が発生

    (発生までの時間および残油量を計算) 

    ボイルオーバー発生時の輻射熱の影響範囲、及び油の飛散範囲を図示
    毒性ガス(液体)を含む
    タンクからの漏洩
    (漏洩/蒸発量を計算) 

    ガス拡散
    (ppm/LELの50%/臭気強度の
    いずれかで、影響範囲の
    経時変化を図示)
    サンプル
    (PDF)
    球形タンクの災害シナリオ 原油タンクの災害シナリオ 毒性ガスタンクの災害シナリオ


    このようにして計算した影響度のうち最大の影響度を基準に各初期事象に応じた災害の相対的影響度インデックスを計算します。損失の絶対値を求めることは難しいが、相対的にはほぼ正確に影響度の大小を想定できるからです。

  4. プラント災害リスクレベル評価
    定量的リスク分析で得られた相対的災害レベルインデックス(F)と影響度評価で得られた相対的影響度インデックス(S)から、各々の初期時事象に伴う災害リスクレベル(R)を下式により求めます。
         R = F  x  S
    災害リスクレベル(R)に応じてリスクレベルを下図の例のように分類し、対応策の緊急性、必要性を決める際の判断材料とします。

    リスクレベル評価

    災害リスクレベル(R)=F x S

    備考

    From

    To

    EXTREME Risk

    1.00E-03

    緊急にリスク低減対策を行う。

    HIGH Risk

    1.00E-04

    <1.00E-03

    なるべく早急にリスク低減対策を行う。

    MODERATE Risk

    1.00E-05

    <1.00E-04

    緊急性はないが、リスク低減策を行うことが望ましい。

    LOW Risk

    <1.00E-05

    特にリスク対策を行う必要はないが、安全管理を実施する。