危険区域の精緻なリスク評価(最新IEC規格による防爆エリアの設定)

 精緻なリスク評価とは 

「危険区域の精緻なリスク評価」とは、爆発性雰囲気が発生する可能性のあるプラントや工場などにおいて、経済産業省発行の「プラント内における危険区域の精緻な設定方法に関するガイドライン」(以下、「防爆ガイドライン」)および最新の国際規格:IEC 60079-10-1 Edition 3.0(以下、「IEC Ed3.0」)に基づき、従来よりも詳細かつ定量的にリスクを算定・評価し、危険区域(防爆エリア)を最適化する手法のことです。

IEC (International Electrotechnical Commission

従来の評価方法に比べ、より具体的な漏洩条件、ガスの放出特性、換気条件、物質の物性値などを考慮に入れることで、リスクを正確に把握し、危険区域と非危険区域をより合理的に区別することを目的としています。
また、従来の評価方法では取り扱われる流体の物性、運転条件(温度、圧力)、取扱量などに関わらず一律的に広く危険区域が設定されていましたが、精緻なリスク評価ではリスクに応じた危険区域となり、結果として非危険区域が広がることが多くなりました。

※従来の評価方法と最新の評価方法についての詳細は、こちらのリンクをご参照ください。

<IEC Ed3.0 >  <防爆ガイドライン>

 

 リスク評価によるメリット 

この精緻なリスク評価による主なメリットとしては、次の事項が挙げられます。

  1. 危険区域の最適化とコスト削減
    リスクを合理的に評価し、危険区域の範囲を必要最小限に抑えることで、高価な防爆機器から非防爆機器への切り替えが可能となり、設備投資や維持管理のコストを削減することができます。

  2. 第1等級放出源への適用
    防爆ガイドラインでは第2等級放出源を主としていますが、タンク等のベント、開放液面を有する設備・機器、塗装面などの第1等級放出源の評価についてご相談いただくことが多くなっています。
    第1等級放出源については、防爆ガイドラインやIEC Ed3.0に具体的な計算方法の記載がありませんが、実際の現象を踏まえて、リスク評価方法を検討し、その評価結果を基に合理的な危険区域とすることが可能です。
    (弊社では第1等級放出源の評価方法について、その考え方をご提示しています。)

  3. 屋内への適用
    防爆ガイドラインでは屋外を中心に規定されていますが、屋内についてもIEC Ed3.0に基づいて評価することが可能です。
    危険物を取り扱う屋内施設では換気装置が設置されていることがほとんどですが、その換気能力の見直し、予備機の設置、局所排気の設置などによって全域を非危険区域化することも可能です。

  4. 少量危険物取扱所への適用
    危険物製造所や一般取扱所と比べて、危険物の取扱量が限られる少量危険物取扱所においても、施設全体に危険区域が設定されていますが、リスク評価により危険区域の大幅な低減、場合によっては施設全体を非危険区域化することが可能です。

  5. 保安レベルの維持・向上
    電気設備の防爆構造を規定している各種法令(消防法、高圧ガス保安法、労働安全衛生法など)が求める保安レベルを維持しつつ、より実態に即した安全対策を講じることが可能です。また、危険箇所の網羅的な抽出とリスク評価により、危険箇所を可視化し、安全教育等を通じて周知徹底することで安全意識の向上を期待できます。



 リスク評価後の展開事例 


リスク評価によって、非危険区域が確定・確保され、自社内のDX化等の業務改善に展開が期待される事例をご紹介します。
危険物施設の保安分野において推進されているDX化による業務改善・効率化、働き方改革、人材不足の解消に向けた活用が期待できます。

  1. スマートフォンやタブレットなどの可搬式非防爆機器の使用範囲拡大
    現場での情報閲覧、即座の情報共有や報告、作業記録の電子化など、現場作業の効率化や負担軽減、バイタルセンサーなどの携帯による作業者の安全確保のために、スマートフォンやタブレット端末などを導入が可能となります。

  2. センサー・カメラの設置範囲拡大
    現場にセンサーやカメラを設置し、継続的に情報を取得することで従来作業者が実施していた作業を自動化・電子化することが可能となります。また、得られた情報を基に解析、診断し、早期の異常検知を行い、事故や故障等の未然防止に役立てられます。また、侵入検知によるアラート機能などを追加することで危険区域への誤侵入防止に役立てられます。

  3. 非危険区域(非防爆エリア)を確保する条件検討
    非危険区域を確保する条件(必要な換気条件や許容される漏洩量など)を検討し、防爆構造に対応できない固定設備の導入などが可能となります。

  4. ドローンの活用推進
    危険物施設において、足場などが必要な高所の点検作業の代替手段、搭載カメラの画像解析による異常診断などにドローンの利活用ニーズがあります。また、ドローン飛行には飛行計画書作成が必要となり、危険区域と非危険区域を明確にする必要があります。

  5. 工事コスト削減
    非危険区域の拡大により、機器更新時など、より価格の低い非防爆機器を選択可能となり、工事コスト削減に寄与します。

  6. 火気使用エリアの拡大と工事業務の平準化
    非危険区域の拡大により、火気を使用する工事を日常の工事で行うことが可能となり、定修工事の負担軽減とともに、工事業務の平準化を図ることが可能となります。

 

 お客様ニーズにお応えする評価体制の構築 


前述の通り、従来の方法では危険箇所から一律的に危険区域(危険距離)が適用されることがほとんどでしたが、精緻なリスク評価では防爆ガイドラインやIEC Ed3.0に基づき、詳細な評価計算をする必要があります。
第1等級放出源の評価、熱の影響を考慮した蒸発計算など、防爆ガイドラインやIECEd3.0に具体的な計算方法が示されていない項目、複雑な条件に対しても、化学工学、熱力学、流体力学などの工学的な検討を行う必要があり、高い専門性が求められます。
また、網羅的に危険箇所を抽出し、各箇所について個別にリスク評価計算を行います。

弊社では効率的に実施できる体制の整備にいち早く着手し、その体制を構築いたしました。

  • 防爆ガイドラインやIEC Ed3.0に規定されていない計算方法については、これまでの評価実績からノウハウを積み上げ、同様に効率的な検討が可能な体制を構築しています。
  • 手計算で実施した場合、長時間を要することが想定される場合でも、当社独自のプログラムを活用することで大幅に時間短縮し評価結果をご提供できます。
  • 海外拠点向けにリスク評価の検討が必要な場合、報告書および評価結果資料を全て英文でご提示することも可能です。IECEd3.0 は、国内にとどまらず、海外でも広く採用されている規格です。

まずはお気軽にお問い合わせください。Web会議でリスク評価についての詳細をご説明させていただくことも可能です。

 

 カタログ  

危険区域の精緻なリスク評価業務についての「カタログ」は、こちらからご覧いただけます。
右の画像をクリックすると、カタログダウンロードのページへ移ります。



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